架空番組タイトル
2022年6月19日 20:00〜21:54
『ここにタイトルを入力 ゴールデンSP』
内容
那須川天心vs武尊の試合が行われる『THE MATCH 2022』が放送できなくなったため、「なんとかしろ!」と上層部に無茶振りされたバラエティ制作チーム。ひとまず代わりの番組として『超ド級!世界のありえない最強映像2022』を放送することにしたが、歴史的な一戦を楽しみにしていた格闘技ファンの期待に応えたい…!そんな想いを抱いたスタッフは『ありえない最強映像』の放送中、上層部にバレない程度にどうにか 『THE MATCH 2022』を組み込むことにした。果たして一体どんな2時間になるのか。
詳細
東京ドームで行われる世紀の一戦について、スタジオでコメントするため呼ばれていたゲストだったが、その仕事が急遽『ありえない最強映像』の生放送のスタジオパネラーに切り替わったため、落胆する一同。彼らがショックのあまり、映像にまともにリアクションができないことを悟ったスタッフは、急遽格闘技に興味がない榊原郁恵をブッキングし、元気なリアクションを担当してもらうことに。
いざ本番がスタート。やはり快活な反応を見せ続ける榊原に対し、鎮痛な面持ちを隠せない関根・ニューヨーク・朝比奈・松永。どんな映像を見てもワイプリアクションは常に無表情。仕事を真面目にこなすことができない程のショックを受けているとは知らない榊原は、彼らに怪訝な視線を向ける。
…放送中、やはりどうしても『THE MATCH』が諦めきれない格闘技好きゲストとスタッフたちは、あの手この手で試合の映像を流すべく四苦八苦する。
◆パネラーを映すワイプに、当日13時から始まっている試合のダイジェスト映像をちょこちょこ流す
◆『海外の繁華街で起こった衝撃の瞬間』という映像に映る巨大モニターに、こっそり試合の映像を合成
◆『おバカで愛らしい!動物映像』のコーナーで飼い主の観ているテレビに試合の映像を合成
◆司会のアナウンサー2人がつけているスマートウォッチ
◆コメントを振られたパネラーに「これキックボクシングで言うとね…」など、やたらと格闘技喩えをしてもらい、その再現映像と称して試合を流す
◆『パネラーのスマホに入っているありえない動画』を紹介してもらう流れでスマホを画面に向けると試合が映っている
…これらの行動に、テレビを見ていた視聴者が反応!Twitterでは称賛の声が次々と上がる。ゲストたちの表情にもいつしか活気が戻り、流暢にコメントを発するようになる。映像を見てのワイプリアクションも、最初とは打って変わって派手に。一連の流れについていけない榊原は、困惑しつつもスタジオに熱気が溜まっていく様子を満足げに見届ける。
…しかし、その数十分後、フジテレビ上層部がスタジオに乱入。「何を勝手に流してるんですか?」と冷たく言い放つ。先ほどまでの行動を反逆行為とみなし、関わったスタッフや演者をスタジオから排除し始める。
「いいですか、皆さん。テレビの放送には契約がつきものなんです。民間放送である我々にはスポンサー様の存在が絶対です。またこういった格闘技の試合をテレビで流すためは莫大な資金も必要となります。そういうしがらみがしっかり存在してくれるから!我々の放送は健全に保たれてるわけなんです。そういうのを一回考えずにね、全部すっ飛ばしてね、勝手に試合なんか流されたらたまったもんじゃないんだよ!皆さんだって大人ですよね?だったらわかるはずだ。あんたらだって事務所との契約で成り立ってる仕事だろうが!一つ一つの契約をしっかりクリアしていくことで成り立ってるものを崩すんじゃねえよ。大人がお金を生むためにやってることをな、勝手に邪魔するんじゃねえよ!大人ならわかってるはずだろォ!?明日からあんたたち全員出禁だよ!クビクビ!…………取り乱しました、番組続けてください」
そう告げて一旦カメラ裏に戻る上層部。スタジオに残ったのは司会のアナウンサー2名と榊原郁恵のみ。榎並アナの震える声で進行が再開し、衝撃映像が始まるが……榊原は「ちょっと止めて!」とストップをかける。
「わたし格闘技とかよくわかんないですけど、一流芸能人のみんながあんなに落ち込みながらテレビ出てるっておかしいと思ったんです。プロなら真面目にやってよって思ったんですけど、みんなどうにかして試合を流そうとしてて、それだけ必死なんだな、それだけ今日の試合は大事なものなんだなとも思ったんです。」
立ち上がり、上層部に語りかける榊原。さらにこう続ける。
「あなたたちの仕事は何?テレビを通じて夢を与えてるんでしょ?ビジネスとして成立させなきゃならないのはごもっともだけど、その前に楽しくて夢のある番組を視聴者の皆さんに届けることじゃないの?お金の為じゃないの!未来の為にやってるの!子供達はどうするのよ。将来を担う子供達にごくわずかな可能性でもいいから夢を与えるのが私たちの仕事じゃないの!?」
上層部の目に映る榊原郁恵……その姿にピーター・パンがオーバーラップする………。かつて、新宿コマ劇場を華麗に飛び回っていた彼女が珍しく声を荒げて反論する様子に、上層部はやれやれといった表情である決断をする。
「わかったよ!もう知らねえからな!そうだよ!わかってるよ俺らだって!夢を与える仕事、いっちょやってやるよ!!」
………ここから放送終了まで、テレビ画面は東京ドームの試合映像を映し続けるのであった………